2006年 09月 06日
24節季便り 白露 2006.9.6 |
牧村好貢
朝晩めっきり涼しくなり、日暮れも早くなると秋の風情である。白露(はくろ)、美しい名前だ。続く9日の重陽の節句とともに季節の変わり目にふさわしい好きな言葉だ。酷暑で弱っていた植物(主に国産種)や昆虫達も元気を取り戻したかのようだ。日本の植物が都会で育ちにくいのは、夜露が降りなくなったかららしいが、土と草っぱらがなければ当然かもしれないし、エアコンが年中回って乾燥しきっているから仕方がないのかも。
日本が亜熱帯化しているというのは何度か書いたかもしれないが、先日宮脇先生にお聞きしたら、国際学会ではすでに正式な分類になっているとのこと。
なんとなく国民も感じていて不安を感じていたり、あるいは一次産業に従事している人たちはかなり深刻に受け止めておられると思う。NHKの番組でもある種の蝶の北限がどんどん登っているとか、東京湾の海の中が熱帯の生き物で一杯だとか。富良野自然塾主宰の倉本聡氏は今まで函館近くが北限のブナの木が富良野で育つようになってこれは「温暖化」どころでなく「高温化」とおっしゃられているほどだ。いずれもここ30年ほどの話だ。
8月末に宮脇先生の植林ツアーで20数年ぶりに東南アジアに行ったが、現地のほうが名古屋より気温は低い。32,3度でかつ緑が多いので暑さの感じが違う。
帰りのセントレアで、久々検疫検査のカードを出したが、熱帯雨林(ジャングルではなくレインフォレスト)私の靴の裏の土のことや衣服に付いたもろもろが気になった。熱も北上するが、1300万人の海外旅行者もさまざまなものも日本へ持ち込んでいるわけだ。国も外来種の歯止めをあわてて始めているが、温暖化防止より、より具体的な亜熱帯化対策法案を作るぐらいでないと、およびもつかない影響が各方面ででるように思う。温暖化ストップの掛け声だけでなく、具体的に目に見えるわかりやすい形で提示しないといけない。
ボルネオの町もKLも恐ろしい勢いで森の破壊が進み、パームヤシのプランテーションやビルや道路の建設ラッシュである。普通の観光客はヤシ畑を見てみどりが多く、気持ちがよいと思っているはず。飛行機の中の隣のビジネスマンに、窓から見える煙のことを教えてもらった。HEIZE(ヘイズ)といって、隣国インドネシアのスマトラ島の焼畑の煙がスマトラ海峡を越えてはるかかなたのマレーシアに頻繁にやってくるというのだ。通常の焼畑は認められているが、この季節、大規模伐採は重罪というにもかかわらず、大手の会社が森林の違法伐採をしているからだという。日本の企業も関わっているのだろう。私は海外植林は基本的にはあまり賛成してこなかった。植林の前に、伐採しないことを日本人が忠告をし、日本人が材木やマングローブに育つエビを買わない、食べないようにすることのほうが先決だから。カシミアを買っている人はモンゴルの砂漠化に手を貸している。“それでも私は木を植える”という考えが宮脇先生だ。本来天然更新で復元されるはずの森になぜ植林?もっと根っこから考えてみたい。
地球の酸素の40%を供給し、大気中の炭素量とほぼ同じ量を森林が固定しその約半分以上を熱帯雨林が固定している。種の半分以上が7%のこの地に生息しているという。地球の肺であり、生態系の要である熱帯雨林を4日間のツアー期間中毎日3時間以上歩いたが、素晴らしい体感だった。下草や幼苗いっぱいの意外に明るい森、心地よい静寂、聞こえるのは鳥とセミや虫の声だけ。多種多様の樹木、草類やつるのラタン。津波も防ぐという7,8mにもなるマングローブの足。その足元に遊ぶシオマネキ。初めての私には贅沢すぎる。
みどりの仕事に関わる私の念願はやっとかなったが、宿題をたくさん貰ったツアーでもあった。一緒に植えた日本の若者達の熱意とマレーシアの学生達の初めの一手が、かすかな望みをつないだことを祈る。
by green-fellow
| 2006-09-06 18:16